CTLA-4遺伝子多型と1型糖尿病および自己免疫性甲状腺疾患との関連機序

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11671134
• 研究機関: 埼玉医科大学
• 研究代表者: 粟田 卓也 埼玉医科大学, 医学部, 助教授 (40184303)
• 研究分担者: 井上 郁夫 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (60232526)
• キーワード: 1型糖尿病 / IDDM / 自己免疫性甲状腺疾患 / Graves病 / 橋本病 / CTLA-4 / 多型 / 関連

研究概要

1型糖尿病(IDDM)の疾患感受性遺伝子として、HLAクラスII(DQ,DR)遺伝子(IDDM1)、インスリン遺伝子上流繰り返し配列(IDDM2)に次いで明らかとなったCTLA-4遺伝子多型(IDDM12)について、IDDMおよび免疫性甲状腺疾患(AITD;Graves病あるいは橋本病)との関連機序を検討するため、遺伝学的解析と機能的解析を行い、以下の成績が得られた。
1.CTLA-4遺伝子に隣接するCD28遺伝子多型とIDDM、AITD(Graves病、橋本病)との関連は認めなかった。
2.CTLA-4遺伝子には3つの多型(-308C-T多型、+49A-G多型、3'非翻訳領域(AT)n多型)が存在し、C-G-M、C-A-S、T-A-Lの3つが主要なハプロタイプであることが判明した。
3.これらのうち、C-G-MハプロタイプのみがAITDおよび急激発症かつインスリン枯渇の典型的IDDMと有意に関連した。
4.+49A-G多型がA/Gヘテロである7名についての全血培養後のRT-PCRによる解析では、すべての例でG allele由来のCTLA-4遺伝子転写産物はA allele由来転写産物より減少しており、かつ減少の程度はPHA非刺激時で著しかった。
結論として、3'非翻訳領域のAT-rich配列はmRNAの安定性に影響することが報告されており、以上の結果は3'非翻訳領域(AT)n繰り返し配列が実際にCTLA-4遺伝子転写産物の安定性に影響する可能性を支持する。感受性のC-G-Mハプロタイプでは、Tリンパ球の活性化を抑制すると考えられているCTLA-4の転写産物が減少することが、IDDM、AITDとの関連の理由であることを意味しているものと思われる。

研究成果

• [文献書誌] Abe,T.Awata,T.and Eguchi,K.: "CTLA-4 gene polymorphism determines the mode of onset of type 1 diabetes and presence of islet specific antibodies in Japanese patients"Diabetes Res Clin Pr.. (in press).
• [文献書誌] Awata,T.Inoue,K.Inoue,I.et al.: "Lack of association of the Ala45Thr variant in the BETA2/NEURODI with type diabetes in Japanese"Diabetes Res Clin Pr.. (in press).
• [文献書誌] Awata,T.Inoue,K.Kurihara.S.et al.: "Missense variations of the gene responsible for Wolfram syndrome(WFS1/wolframin)in Japanese: possible contribution of the Arg456His mutation to type 1 diabetes as a non-autoimmune genetic basis"Biochem Biophys Res Commun.. (in press).
• [文献書誌] 粟田卓也、栗原進、片山茂裕: "CTLA-4遺伝子と1型糖尿病。"分子糖尿病学の進歩1999(矢崎義雄監修、金原出版). 83-88 (1999)
• [文献書誌] 粟田卓也、井上清彰、片山茂裕: "1型糖尿病の疾患感受性遺伝子:診断法と診療への応用。"Pharm Medica. 17・9. 67-71 (1999)
• [文献書誌] 粟田卓也: "1型糖尿病の分子病態と発症遺伝子。"組織培養工学. 25・14. 562-566 (1999)