我々はすでに、日本人1型糖尿病についてHLAクラスII遺伝子(IDDM1)、インスリン遺伝子上流繰返し配列(IDDM2)、CTLA-4遺伝子多型(IDDM12)の解析を行い発表してきた。本研究でも、日本人1型糖尿病の遺伝子解析を引き続いて行い、以下の成果が得られた。 1.我々はすでに、CTLA-4のG49A多型のG alleleが1型糖尿病の典型例で有意に増加していることを報告した。今回、ケトアシドーシスで発症した症例およびIA-2抗体陽性の症例でG alleleが有意に増加していることを認めた。 2.さらに、GAD抗体は陽性であるが2型糖尿病の臨床像を呈しているものは、通常の1型糖尿病症例あるいはGAD抗体陽性の1型糖尿病症例に比較して、G alleleが有意に少ないことを認め、CTLA-4遺伝子多型が1型糖尿病の発症様式、進展に密接に関わっていることを明らかにした。 3.膵β細胞に発現する転写因子の一つであるBETA2/NEUROD1の多型が1型糖尿病と関連するとの報告があったが、我々が検討したところ、関連は認められなかった。 4.Wolfram症候群は、インスリン依存型糖尿病(IDDM)、尿崩症、視神経萎縮、難聴を併発する疾患であるが、その原因遺伝子WFS1が最近同定され、膵β細胞の生存に重要であると考えられている。WFS1と1型糖尿病との関連を検討したところ、アミノ酸多型が日本人1型糖尿病と関連していることを見出した。1型糖尿病の非自己免疫的な遺伝基盤であると思われる。
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