研究概要 |
アポCIの生理作用と高脂血症における病因的意義を見つけることが本研究の目的である。アポCIのトリグリセライドーリッチリポタンパク(TGRL)の異化抑制がCIIIとは別な機序で独立して生じていることが明らかとなれば新たな高脂血症の機序解明につながる。本研究で我々はリポ蛋白中のアポCIを高感度ELISAにて測定することにはじめて成功した。さらにCIII,Eの高感度ELISAも確立した。これを用いて平成11年度はVLDLのアポCIは糖尿病性腎症で高値となり、CII、CIIIと独立してVLDL、IDLと有意に相関することを発見した。平成12年度は糖尿病性腎不全でCI、CIIIが著明に上昇するが非糖尿病性腎不全ではアポCIIIが単独で増加することを発見した。さらに平成12年度には虚血性心疾患でVLDL-アポCIが有意に増加し、この増加はVLDLの粒子の増加をひきおこし、虚血性心疾患の独立した危険因子となることを発見した。 動物モデルではアポCIを過剰発現させたマウスではTGの異化低下による中等度の高TG血症を認めた。アポCIIIノックアウトマウスとアポCI過剰発現マウスを交配してアポCI単独の脂質への影響を調べる研究は成果を出せなかったが、その研究中にアポCIIIノックアウトマウスでは著明なTGの代謝回転が生じており、アポCIIIはTGRLの無駄な代謝を制御し、エネルギー効率を高めていることを発見した。さらにアポCIIIノックアウトマウスをストレプトゾトシンで糖尿病にしても高TG血症は生じないことを発見し、糖尿病性高TG血症の成因にアポCIIIが深く関与している事実を明らかにした。
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