今年度は本研究計画の最終年度に当たり、これまでに得た成果をとりまとめて一部はすでにトップジャーナルに論文発表を行った。さらに最終的な研究結果も現在投稿中である。 これまでに本研究の結果について国内外での学会報告を行ったところ、世界的な注目の中から今後の課題として、1)transgeneの発現調節が考慮されるべきであること、2)プロインスリンがプロセッシングされる際に生理的な部位と同じ2か所で双方とも切断され、片方だけの切断で生じる中間生成物が分泌されないこと、などが必要であること、さらに3)本研究プロジェクトが開始された4年前に比較して、本研究で目標とした代理細胞治療とさらに新らたに注目されるようになった組織再生とどちらが現実的なのか、などが挙げられることが判明し、将来的展望を得ることが出来た。 新たな課題である発現調節に関しては、転写レベルでの調節性につき、すでに今年度内に着手し始めた.特にインスリン分泌性の代理細胞に対し、体外から物理的・化学的刺激などを加えることで転写と生合成が高まるようなシステムを考案し、in vitroにおいて検討中である. Transgeneを導入した前駆細胞の分化に伴いインスリン分泌が亢進する現象が、細胞の種類や分化のための刺激によらずに認められた.本研究の実施中に発見されたこの現象はインスリンに限らず起こる可能性を示すもので、代理細胞治療における基本的で重要な知見であると考えられた. 上記の課題がまだ解決されておらず、研究計画の期間内には臨床プロトコールの作製にまで至ることはできなかった.
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