ヒトproinsulin遺伝子を非内分泌細胞に導入し、生化学的に正しくプロセッシングを受けた正常なヒト・インスリンの分泌が可能な代理細胞の創出が可能となった.レトロウイルスベクターによりマウスの間葉系の細胞、特に前脂肪細胞、筋芽細胞にこの改変型ヒト遺伝子を移入した結果、質量分析法、および免疫学的検出法によって培養上清と細胞内にヒト・インスリンを検出した。この代理細胞の移植にはやはり隔離デバイスを必要とする.私達はモデル動物の移植治療に半透膜チャンバーを用いて検討したが、臨床応用のためには生体適合性、チャンバー内の栄養、強度などにつきさらに研究が必要であることが判明した.さらに私達は遺伝子導入と組み合わせて電気・磁気・温度といった物理刺激応答性の遺伝子プロモーター、あるいは生体内のリガンドと転写因子型受容体などのバイオ素子システムを開発した.この新しい代理細胞治療によって食事やcircadian rhythmに対応した新しいホルモン・デリバリーシステムが期待される. 最終年度に当たり、これまでに得た成果をとりまとめて一部はすでにトップジャーナルに論文発表を行った。さらに最終的な研究結果も現在投稿中である。また海外での学会報告をこれまでに行った結果、世界的な注目の中から今後はtransgeneの発現調節が考慮されるべきであること、プロインスリンがプロセッシングされる際に生理的な部位と同じ2か所で双方とも切断され中間生成物が分泌されないことが必要であること、さらに本研究プロジェクトが開始となった4年前に比較して、本研究で目標とした代理細胞治療が新しく注目されるようになった組織再生とどちらが現実的なのか、など将来的展望を得ることが出来た。
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