研究概要 |
虚血性心臓病を有する2型糖尿病患者に、冠拡張薬nicorandil(N)を投与すると、血糖コントロールが悪化することを観察した。NはKチャネル開口薬(KCO)であることから、インスリン(In)分泌障害によると想定されたが、In分泌には影響なく、In抵抗性を来たす結果であることが明らかになった(Taro Wasada et al. Metabolism 48:432,1999).そこで、[目的]in vitroにおいて、骨格筋の糖取り込みにおけるKCの関与を検討した。[方法]ヒト骨格筋細胞株(Clonetics社)を増殖,分化させた筋管細胞を用い,In(1μM)および高糖G(25mM)存在下の^3H-2DG,^3H-3OMGの取り込み率に及ぼすKCO:PCO-400,Nとその抑制薬glibenclamide(GB),gliclazaide(GC)の効果を検討した。[結果]Inおよび高G(In非存在下)による糖取り込み促進(130%,168%)はいずれもPCO-400(10-100μM),N(100-600μM)の添加により用量反応的に抑制された。一方,これらの抑制効果はGB(30-100μM),GC(〜3000μM)の前処置で拮抗された。[総括]骨格筋への糖取り込みは,KCの閉鎖により促進,開口により抑制された。この結果は,臨床的にNの投与により耐糖能とIn感受性の低下を示した先の我々のin vivoの成績と一致する。一方,高GはInと同様の影響を受けたことから,KCは両者に共通するシグナル伝達ステップ(細胞内Ca濃度あるいはPKC活性化以降?)を調節する可能性が示唆され、さらに研究を進めている。
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