研究概要 |
目的:in vivoにおける骨格筋の糖取り込みにATP感受性Kチャンネル(KC)の関与が示唆されているが、細胞レベルでの研究はみられない。ヒト骨格筋培養細胞を用いこの点を検討した。方法:ヒト骨格筋細胞株(Clonetics社)を増殖、分化させた筋管細胞を用い、インスリン(Ins)1μMおよび高糖(G)25mM存在下の^3H-2DG、^3H-3OMGの取り込みに及ぼすKC開口薬PCO-400、nicorandil(N)と抑制薬glibenclamide(GB)、gliclazide(GC)の効果を検討した。さらにその作用機序に関して、PKCの役割を検討した。結果:Insおよび高G(Ins非存在下)による糖取り込み促進(各130%、168%)はいずれもPCO-400(10-100μM)、N(100-600μM)の添加により用量反応的に抑制された。一方、これらの抑制効果はGB(30-100μM)、GC(〜3000μM)の前処置で拮抗された。PMA(phorbol ester)の添加は膜分画PKCを4倍増加させ、PCO-400による糖取り込み抑制を用量反応的に解除した。しかし、Ins刺激下およびPCO-400抑制下においてPKCの変動は見られなかった。結論:骨格筋の糖取り込みは、KCの閉鎖により促進、開口により抑制された。PMAの効果は,PKCがKCを抑制的に調節するとする既報の成績とも一致し、糖取り込みにおけるKCの関与をさらに支持する結果であった。しかしIns、PCO-400の添加においては膜分画PKCは有意な変動を示さなかったことから、PKCは糖取り込みに対するKCのmodulationに直接関与しないと想定される。
|