研究概要 |
インスリン依存性糖尿病患者は,厳密なインスリンによる血糖管理を行ったとしても,糖尿病性腎症のため腎移植を必要とするに至る。諸外国において臨床応用されている根治的治療法は現在のところ,膵(臓器)腎同時移植が唯一のものだが,膵移植は合併症も多く,侵襲的である。より理想的でありながら,かつ現実的な本患者の治療法は腎移植時に膵ランゲルハンス島(以下ラ島)移植を併用することである。そこで,膵ランゲルハンス島(以下ラ島)移植で,あらかじめレシピエント細胞を導入して細胞キメリズム(micro cell chimerism)を誘導した腎臓を同時に移植することで,ラ島生着延長が得られるか否かを検討した。純系ラットF344からLEWで,ドナーに5〜10Gyの非致死量の全身照射を行い,その1週後に,レシピエント骨髄細胞および脾細胞を移植しchimerismを誘導した。更に,その4週後にこのラットの腎臓および,別に分離したF344のラ島を同時に移植した。非chimerism誘導群ではラ島の生着日数(高血糖にて判定)は7〜14日で,いずれも血糖は500g/dl以上に上昇したが,ラ島単独移植群と比較すると延長効果が認められた。一方,Chimerism誘導群では,Chimerism誘導群の生着日数は11〜25日であり,更に,生着延長する可能性が示唆された。これらの結果から,ドナーTBIとレシピエント骨髄細胞および脾細胞を移植によるchimerism誘導graftで,免疫学的トレランスが誘導される可能性が示唆された。さらに,生着日数から,照射線量,骨髄細胞数,その時期等につき至適条件を検討中である。さらに,micro cell chimerismの程度および強さと生着延長効果の関連を検索して,その機序を解明中である。
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