これまでの研究から、血管吻合をともなう心臓・胸腺同時臓器移植は、血流再開を伴わない胸腺細胞移植とくらべ、GVHDをおこさず移植心臓の拒絶反応を抑えることがわかっている。術前ALS投与や術後FK506の短期間投与で生着延長効果が見られるが、まだ免疫寛容は得られていない。レシピエントの胸腺と脾臓の摘出とALS・抗CD3抗体の投与を組み合わせて施行後、ドナー胸腺臓器移植を実施し術後FK506を短期間投与して、レシピエントの免疫環境をドナータイプにし、免疫寛容が得られるのではないかと考え、ラットを使用して研究を計画した。 high responder combinationであるDAからLewisへの移植で術前ALSと抗CD3抗体の同時投与の第3群では、同時移植心臓の平均生着期間は84.2日で生着延長効果が著明に見られたが免疫寛容は得られなかった。low responder combinationであるBNからLewisへの移植で術前ALSと抗CD3抗体の同時投与の第6群では、同時移植心臓の生着期間はすべて100日を越え、免疫寛容が得られたと考えられた。GVHDはおこらなかった。この免疫寛容がDonor-Specificであるかどうか、術前ALSと抗CD3抗体投与とレシピエントの胸腺と脾臓の摘出でTリンパ球がどのように変動するか今後検討したい。 結論:low responder combinationで術前ALSと抗CD3抗体の同時投与後、レシピエントの胸腺と脾臓を摘出すると、胸腺臓器移植と移植後のFK506の短期間投与で安全に免疫寛容が得られるものと考えられた。
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