研究概要 |
【目的】心臓移植に代わる新たな治療法として細胞移植に注目し、当施設でも虚血性心筋症ラットに対し、胎児心筋細胞移植を行い心収縮能の改善を認めた。しかし、細胞移植の効果は十分ではなく、組織学的にも細胞生着率が低いことが認められた。そこで梗塞部の血管新生が細胞移植の効果を増強せるかを検討した。 【方法】ラットの左前下行枝を結紮し,虚血性心筋症ラットを作製した(n=44)。初回手術から4週間後に心エコーにて心機能を測定し,これらを無作為に4群に分け、次の如く処置をした(各群n=11);培養液のみ注入:C群、胎児心筋細胞6×10^6個を移植:TX群、bFGFを注入:F群,bFGF注入し1週間後に細胞移植:F-TX群。 各処置施行4週後には心臓エコー、心カテーテルにてin vivoにおける心機能を評価した。 【結果】処置前の心機能は4群間で有意差を認めなかった。処置後4週間ではF、F-TX群で有意にLVDの縮小を認めた(C,TX,F,F-TX;10.7±0.6,10.0±1.1,9.5±0.7,9.6±0.6mm)。TX,F,F-TX群ではLVDs(8.8±0.7,7.2±0.9,7.2±1.1,7.0±1.0mm),FS(17±4.6,28±4.4,25±8.6,27±7.3mm),LVEmax(0.13±0.04,0.30±0.08,0.27±0.20,0.52±0.23mmHg/μl)でC群に比べ有意に心収縮能改善を認め,F-TX群では最高値を示した。組織学的にはbFGF投与1週間後には梗塞巣内に血管新生を認め、処置後4週でF-TX群ではTX群に比べ梗塞巣内に多くの移植細胞を認めた。 【まとめ】慢性虚血性心筋症ラットに対する胎児心筋細胞移植において、bFGFの前投与によりprevascularizationすることは移植細胞の生着を高め、細胞移植の効果を増強させる。
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