研究概要 |
ペプチド及び遺伝子導入抗原提示細胞(樹状細胞)による免疫療法の研究において、腫瘍抗原ペプチドとして従来同定されてきたMAGE-3遺伝子由来HLA-A2結合性ペプチド(FLWGPRALV,amino acids271-279)とヒト末梢血単球由来の樹状細胞とを用いて、食道癌術後長期生存患者の末梢血リンパ球との混合培養系でペプチド特異的細胞傷害性Tリンパ球の誘導と患者の自己腫瘍細胞(MAGE-3遺伝子陽性、HLA-A2陽性)に対する傷害活性を証明し、T細胞受容体の解析ではVb3& Vb7のオリゴクロナリティーを証明した.また遺伝子導入樹状細胞の特異的免疫誘導の検討のためモデル抗原遺伝子としてLacZ遺伝子を用いその標的蛋白としてβ-galactosidase及びH-2L^d結合性ペプチド(TPHPARIGL,amino acids876-884)に対する特異的免疫誘導の研究を進めている.その結果アデノウイルスベクターを用いる系で特異的な抗体産生とIFN-γ及びIgG2a産生を主とするTヘルパー免疫の動きを捉えることができた.この特異的液性免疫誘導を指標として、樹状細胞の培養条件(GM-CSF or IL-3)の違いによる免疫誘導機能の違いの解析を進めている.腫瘍抗原としての腫瘍抽出遺伝子(メッセンジャーRNA;mRNA)での既知の腫瘍抗原遺伝子(MAGE,K-ras,p53)の発現検討とともに免疫抑制蛋白に関する遺伝子(Fas,Fas ligand,TRAIL,TRAIL receptor)の発現検討も行い、免疫誘導やアポトーシス誘導などの機能検討を行っている.マウス腫瘍細胞抽出mRNA導入樹状細胞による特異的免疫誘導では腫瘍特異的なprotection immunityの誘導と担癌マウスの生存期間延長を証明し、腫瘍系によって誘導されるヘルパー免疫の機能の違いを証明した.更に抗癌剤治療における免疫誘導の1つの機序として、樹状細胞の関与を実証する研究への発展をめざし、ex vivoがらin vivoでの樹状細胞の動態と抗原の取り込みの検討を続けている.抑制系の免疫の動きと特異的免疫の指標の動きを同時に捉える検定系の確立を試みている.実際の臨床応用をめざしてさらに、症例を集積中である.
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