研究課題/領域番号 |
11671168
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
北村 薫 九州大学, 医学部, 助手 (70234276)
|
研究分担者 |
井上 博道 九州大学, 医学部, 医員
大野 真司 九州大学, 医学部, 助手 (50203881)
池田 陽一 九州大学, 医学部, 助手 (50311840)
|
キーワード | 乳癌 / 遺伝子導入 / アポトーシス / 薬剤耐性 / P glycoprotein(Pgp) / 補助療法 |
研究概要 |
乳癌における治療の第一選択は外科的切除であるが、それゆえ、腋窩郭清を含めた至適な切除範囲を正確に予測し、これを必要最小限に止めるとともに、多岐にわたる術後補助療法の治療効果を予知して、画一的な集学的治療を回避することが肝要である。本研究は、アポトーシスのシグナル伝達に関わるFasに着目し、Fas蛋白の膜貫通領域を含んだデスドメインとEstrogen Recepto(ER)のリガンド結合領域を融合させ、これを癌細胞に導入させることによって、エストロゲン依存性のアポトーシス誘導を試み、結果的に乳房切除範囲の縮小化を図るとともに、臨床例における遺伝子治療の可能性を追及することを目的とする。初年度においては、導入の可能な範囲やその効率予測を検討するために、臨床検体(切除標本)から得られる基礎データの集積に努めた。薬剤耐性を反映するP glycoprotein(Pgp)の発現と、新鮮切除標本を用いたin vitro感受性試験であるSDI testの相関および再発症例における補助療法の治療効果との相関を検討した。Pgpの発現と、SD活性や臨床病理学的因子との間に有意差は見られなかったが、Pgp(+)群のほうが(-)群に比して有意に再発率が高かった(22例、33.8%vs.8例、10.1%、p<0.001)。これは、Pgp(-)の症例では術後補助療法が奏効して再発を予防しえた可能性が示唆されるが、再発例30例の生存率においても、Pgp(-)群の生存率が有意に良好で、前述の可能性を支持する結果であった。したがってPgp(+)症例は、そのままでは補助療法が奏効しにくい可能性が高く、遺伝子導入を利用した治療によって得られるメリットが大きなサブグループであると考えられた。
|