我々はこれまでcyclophosphamideを用いたキメリズムに基づく免疫寛容の誘導系について1985年より実験を行い、50報以上の報告を行ってきた。マウスにおいて、MHC一致、マイナー抗原不一致の組み合わせにおいて、ドナー脾細胞1x108投与後cyclophosphamide200mg/kg投与するという簡単なプロトコールにて、永久的なキメリズムと皮膚移植片の永久生着が認められる。また、cyclophosphamide200mg/kg投与に加え、Busulfan25mg/kg投与後、ドナー骨髄細胞1x108個投与することにより、MHC不一致の組み合わせにおいても永久的なキメリズムと皮膚移植片のキメリズムが得られ、ドナー特異的免疫寛容が誘導できることを報告した。(J.Immunol.1999)。このプロトコールを用い、異種移植における免疫寛容を誘導する目的で実験を行い、プロトコールの改良を行っている。ドナーをF344ラット、レシピエントをB10マウスを用い、day-2にドナー脾細胞1x108投与、cyclophosphamide200mg/kg及びBusulfan30mg/kgをday0に投与し、day1にドナー骨髄細胞1x108個投与することによりマイクロキメリズム及び皮膚移植片の生着延長を認めている。今後更に皮膚移植片の永久生着ができるプロトコールを開発していく。また、抗α-Gal抗体はヒトブタ間での異種移植における超急性拒絶反応を引き起こす原因となる抗体として知られているが、この抗体を産生するB細胞における免疫寛容の誘導を目的としてα-Galノックアウトマウスを用いた実験を行っている。MHC不一致の組み合わせにおいて、α-GalK.O.マウスにWTマウスの脾細胞を投与すると抗α-Gal抗体の上昇を認め、心移植片は超急性拒絶反応により拒絶されるが、脾細胞を投与後にcyclophosphamide200mg/kg投与することにより抗α-Gal抗体は消失し、B細胞における免疫寛容が誘導された。更に心移植片における超急性拒絶反応は認めなかった。今後更に実験を行い、B細胞での免疫寛容の誘導におけるメカニズムを解析していく。
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