重症細菌感染症、外科手術後の腹腔内膿瘍、重症急性膵炎、多発外傷、重症熱傷、などに引き続いて発症する多臓器障害(MODS;Multiple Organ Dysfunction Syndrome)は高度先進医療に基づく集中治療にも関わらず極めて救命率が低い。本症の発生機序の一つにエンドトキシン、サイトカイン、さらには活性化好中球による活性酸素やプロテアーゼの放出による臓器内血管内皮細胞傷害による臓器微小循環障害の破綻が背景に存在する。本研究の目的は、多臓器不全の背景である臓器内血管内皮細胞の機能破綻、細胞死の機序を解明するとともに、血管内皮細胞の障害抑制、アポトーシスの抑制を図り、既に機能不全や細胞死に陥りかけた血管内皮細胞〜臓器内微小循環系を再生させ、臓器機能の回復を促す新しい多臓器障害治療法の開発であった。本年度におけるIn vitroの研究において、1;活性酸素による血管内皮細胞傷害過程におけるミトコンドリア傷害と細胞死のkineticsを明らかにした。その結果、ミトコンドリア傷害から細胞死に至るCritical pointは2時間であることが判明し、早期のミトコンドリア傷害予防が必要と考えられた。2;より生体に近い血管内皮傷害モデルとして血管内皮細胞のゲル内三次元培養を確立し、臓器内血管内皮細胞系の組織としての再構築を行い、新しい臓器障害〜組織傷害の実験系を確立した。次年度は抗酸化剤、血管内皮増殖因子、ミトコンドリア膜傷害予防剤(CyslosporinA等の)等の投与による、In vitro治療実験を行うとともに、マウス臓器障害モデルを用いてのIn vivo臓器血管内皮再生療法について検討したい。
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