(背景と目的)輸血によって腎移植成績の向上、癌免疫の抑制、術後易感染症などが観察される。その機序の一つに輸血血液中の免疫遂行細胞、造血幹細胞に由来するマイクロキメリズムの成立が関与すると考えられている。この研究は輸血免疫修飾現像とマイクロキメリズムの関連を同種免疫の観点から解明しようとするものである。 (本年度の研究実績) 1.未熟新生児の輸血同種免疫反応 白血球除去フィルターを用いて赤血球輸血を受けた24名の未熟新生児と通常の輸血を受けた20名を対象に輪血前、3ヵ月後の同種免疫を20名のパネルに対するリンパ球細胞毒試験(LCT)にて評価した。両群の計44名の誰もがLCT抗体を獲得しなかった。同種免疫感作予防の観点から新生児に白血球除去フィルターを用いるメリットは無いものと判断された。 2.外科手術患者の同種免疫反応:白血球除去フィルターによる感作予防 術前に同種HLA抗体を保有していない外科手術患者87名を対象に、白血球除去フィルターを用いた輸血(47名)、またはアグリゲート除去フィルターを用いた輸血(40名)を行い、同種免疫反応を20人のパネルリンパ球に対するLCTにて評価した。白血球除去フィルター使用輸血患者の8名(17%)とアグリゲート除去フィルター使用患者の2名(5%)にHLA抗体感作が観察された。免疫健常と考えられる外科手術患者においては、高性能白血球除去フィルターを用いても高頻度に同種免疫感作が発生する。
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