2001年は妊娠・分娩による母体同種免疫反応と、新生児同種免疫反応について検討した。 【背景と目的】妊娠・分娩の際には殆どの女性が胎児に由来する細胞・DNAを一時的に循環血液中に検出できることを昨年報告した。それゆえに妊娠を経験した女性は児の血液に対する感作あるいは寛容をもたらしている可能性がある。また、児は母親の遺伝しなかった抗原(NIMA)に対して感作あるいは寛容におちいっている可能性がある。その児に対するHLA同種免疫感作を評価する。同時に、輸血を要した未熟新生児が輸血血液と母親に対してどの程度のHLA同種免疫を獲得しているかも評価する。 【対象】5〜11年前に新生児集中治療室で輸血を受けた30名とその両親56名。 【方法】HLA同種抗体:13名のパネルリンパ球と家族リンパ球に対する補体依存性細胞毒試験(LCT法)と抗グロブリン増強法(AHG-LCT法)。 【結果】30名の輸血経験児は平均5.0±3.7本の輸血を受けていたが、HLA同種免疫を獲得・保持していた者はいなかった。28名の母親の内、2名(7%)は児と父親(夫)に反応するHLA同種抗体を保持していた。 【考察】新生児の同種免疫反応(HLA抗体感作)は観察されず、新生児全体がlow responderであることが示唆される。寛容に傾きやすいと判断される。一方、母親は7%に抗体が検出され、high responderも存在することが示された。
|