1.MEN-1の遺伝子異常の検索 本研究の最初の目的であった散発性の内分泌腫瘍におけるMEN-1遺伝子の異常を検索した結果、あまりにも散発性の腫瘍では遺伝子異常が発見されず、家族性の内分泌腫瘍を異なった腫瘍発生のメカニズムが存在することが推察された。したがって、特有な遺伝子異常が内分泌腫瘍を引き起こしていることが立証されず、人工的に内分泌腫瘍を作り出すこともこの方法論では不可能であると考えられた。 2.家族性甲状腺髄様癌症例の家系調査 家族性甲状腺髄様癌3家系にわたる家系調査を行なった。患者数3名、保因者2名の甲状腺髄様癌A家系において、コドン609の変異が認められた。この家系の甲状腺癌は、非常に発育の遅く、腫瘍が認められた時点で甲状腺全摘を行えば生命予後は心配ないことがわかった。家系BはMTC2名にコドン620の遺伝子変異があり、2名が同様の変異をもつ保因者でFMTCと診断した。家系Cはコドン634に変異をもつMTC5名、褐色細胞腫1名で、多内分泌腺腫症(MEN-IIa)と診断した。現在のところ保因者は、それぞれの家系で2名ずつ6名認められた。今後これらの家系の調査希望者において、遺伝子診断を行い、ガイドラインに沿ったプライバシーの保護と保因者の治療を行いたい。
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