研究概要 |
各転写共役因子(SRC-1,TIF2,AIB1,p300/CBP,NCoR)のERα転写活性に及ぼす影響を解析した。AIB1についてはDNA増幅、蛋白発現についても検討した。 1)正常乳腺組織、乳癌組織からのRNA抽出 当科で切除された乳癌組織、正常乳腺組織からGuanidium/cesium cloride超遠心法またはTRIZOLを使用してRNAを抽出した。現在RNAは約150例の蓄積がある。 2)乳癌細胞株における転写共役因子のERα転写の調節 ERαおよび転写共役因子AIB1,SRC1,PCAF,CARM1の各発現ベクター、TATAルシフェラーゼレポーター遺伝子をCos7細胞に形質導入して、各転写共役因子のERαにおける転写活性増強作用について検討した。その結果、SRC1およびPCAFに比べてAIB1のERα転写活性増強作用が強いことが示唆された。 3)ERα陽性の乳癌におけるAIB1増幅の検討 AIB1遺伝子からSouthern blot用のprobeを作成した。乳癌臨床例では124例中明らかなSouthern blotによる遺伝子増幅が認められた症例は2例にすぎず、乳癌組織内のAIB1増幅は臨床的重要性は低いと恩われた。 4)AIB1蛋白の免疫組織学法による発現とホルモン療法の効果 免疫染色ではAIB1の特異的染色が乳癌細胞の核、細胞質、周囲に存在するリンパ球に認められた。核染色が細胞質染色と同等もしくは強く認められたものを強発現とすると、強発現例とER陽性に有意の相関があった(p=0.021)。ER陽性でもAIB1強発現例は内分泌療法単独で腫瘍縮小効果が認められ、AIB1非強発現例ではホルモン療法で効果が認められた症例は有意に少なかった(p=0.024)。したがって、乳癌治療におけるホルモン療法の効果予測因子として、ER状況に加えてAIB1強発現の評価が有用であることが示された。
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