本年度は、実験動物をC57/BL6マウスとし、AdCMVh IκBによる肝虚血再潅流障害抑制効果を検討した。まず、肝虚血再灌流障害モデルとして、肝左葉及び中葉を45分間虚血し、その後再灌流し、再灌流直後再灌流3時間後、再灌流6時間後の血清AST、ALT、LDH、ヒアルロン酸を測定し、肝機能を評価した。また、各時点において、肝組織のapoptosisを、TUNEL法及びDNA fragmentationを用いて評価することによって、肝虚血再灌流障害程度を検討した。次いで、CMVをpromoterとするhuman IκBをadenovirusに導入し、AdCMVh IκBを作製した。コントロールベクターとしては、AdCMVLacZを用いた。Adenovirusの投与量や投与時期、投与方法について、文献的報告を詳細に検討し、肝虚血48時間前、1×10^9pfuを尾静脈より注入した上で、肝虚血再灌流障害の程度を比較検討した。AdCMVh IκB投与により、48時間後すなわち肝虚血直前には、マウス肝にIκBが過剰発現し、NFκBの活性化が抑制されたものの、有意な虚血再灌流障害の抑制効果は得られなかった。そのため、Adenovirusの投与量を1× 10^8pfuに変更し、投与方法を腹腔内、門脈投与に変え試行を繰り返したが、やはり、有意な虚血再灌流障害の抑制効果は得られなかった。NFκBの活性化が抑制されるにもかかわらず、虚血再灌流障害の抑制効果をみられない原因を検討、、再試行中である。
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