転写因子NF-κBは、臓器移植時、拒絶や炎症反応に関わる種々の炎症性サイトカインや接着分子、ケモカイン、増殖因子などの遺伝子の調節を通して、炎症と免疫応答に極めて重要な役割を果たすと考えられている。今回、われわれは、心移植時の拒絶反応を低下させることを目的に、NF-κB活性を抑制する"decoy"oligodeoxynucleotides(ODN)をHVJ-リポゾームによるgraft、recipient双方へのtransfectionを試みた。実験動物をWister ratとしたが、HVJ-リポゾーム投与によるNF-κBdecoyの心graft内への導入は困難であった。そのため、標的臓器を肝へと変更し、CMVをpromoterとするhumanIκBを導入したadenovirus(AdCMVhIκB)を肝にtransfectし、移植時にみられる肝虚血再灌流障害の抑制を試みた。肝虚血48時間前、1×10^9pfuを門脈注入した上で、肝虚血再灌流障害の程度をコントロール群と比較検討した。AdCMVhIκB投与により、48時間後すなわち肝虚血直前には、マウス肝にIκBが過剰発現し、NFκBの活性化が抑制されたことが確認されたものの、有意な虚血再灌流障害の抑制効果は得られなかった。そのため、投与方法を腹腔内、尾静脈投与に変え試行を繰り返したが、やはり、有意な虚血再灌流障害の抑制効果は得られなかった。
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