Allogeneicドナーの幹細胞を無処置のレシピエントに注入しても、生着は得られず、なんらかのレシピエント前処置が必要と考えられた。そこで、ラットの骨髄幹細胞を生着させるため、レシピエント前処置のプロトコール設定を試みた。ドナーとなるラットの大腿骨から骨髄細胞を分離して、骨髄細胞浮遊液を作成した。抗CD3抗体を用いてT cell depletionを行なったのち、Total body irradiation(TBI)によって前処置したレシピエントに移植した。TBIのdoseをさまざまに変えて上記の骨髄細胞の移植を行なったところ、TBIが7Gy以下では骨髄幹細胞は生着せず、11Gyの前処置で安定した生着が得られた。ドナーの造血細胞のre-populationを、ドナーのMHCに対するモノクローナル抗体を用いてフローサイトメトリーで確認したところ、移植後30日には、末梢血の白血球は97%以上がドナータイプとなっていた。これらのドナー細胞はCD3陽性、CD45RC(OX-22)陽性、3.2.3.(NK細胞)陽性細胞を含んでおり、multi-lineageであることも確認できた。これらの骨髄細胞レシピエントは、骨髄ドナーのstrainからの心移植片を免疫抑制なしに受容した。今後は、移入幹細胞としてG-CSF mobilized peripheral blood stem cellsを分離し、より臨床応用に近いプロトコールでの幹細胞生着のプロトコールを開発していきたい。
|