ドナー由来造血幹細胞移植によるドナー特異的免疫寛容誘導を目指し、ラットモデルでアロ骨髄細胞移入による造血系細胞の生着について検討した。無処置のレシピエントにallogeneicドナーの骨髄細胞を移入したところ、種々のサイトカインの添加を行なってもドナー由来造血系細胞の生着は得られず、骨髄細胞移入前にcyclophsphamide(CYP)によるレシピエント前処置を行なった。High doseのCYP単剤の前処置ではドナーの造血系細胞を生着させることができたが、GVHDに陥った。造血系サイトカインを添加したドナー骨髄細胞を移入したところ、非致死的なCYP前処置にてドナー由来造血系細胞の生着が得られ、GVHD反応も回避できた。骨髄キメラのレシピエントでは、骨髄ドナーと同系の心臓が生着し、MLRも抑制された。抗CD45モノクローナル抗体による前処置でも一時的に造血系キメラを成立し得た。また、抗CD45モノクローナル抗体によるpassenger leukosyteの増幅、免疫寛容誘導能を確認した。さらに、豊富なドナーリンパ球を含む小腸グラフトの特性に注目し、小腸アログラフト内腸間膜リンパ節での免疫反応について検討した。ドナー由来passenger leukocyteを多く含む肝の免疫学的特異性を利用して、肝小腸同時移植による小腸グラフト拒絶の抑制効果をallogeneic rat modelで確認した。免疫免疫寛容は、移植後の非特異的免疫抑制を要しないため、肝悪性腫瘍に対する肝移植において特に有用と思われ、肝細胞癌の臨床例の検討から肝移植に適した患者選択についても検討した。
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