研究概要 |
心血管閉塞性疾患に対する治療後の再狭窄の問題はステント等の導入による血管内治療の進歩にもかかわらず依然高頻度に起こる合併症であり,その対策が問題となっている.再狭窄の原因である内膜肥厚を抑制する方法として遺伝子治療,放射線治療とならびPhotodynamic therapy(PDT)が注目されている.なかでも新生内膜肥厚に強く関わる平滑筋細胞とマクロファージを選択的に標的とするLigandの有用性について検討してきた.血管へのPDTを施行するには血管内照射を行うことが不可欠であり,レーザー透過の血流による影響が無視できないことから,今回全周照射用Balloon laser light diffuser(BLD)を作成した.さらに第二世代の光感受性物質Mono-L-aspartyl chlorin e6(NPe6)を使用しBLDによる内膜肥厚抑制効果につき検討した.A:蛍光観察.ウサギ腹部大動脈をバルーン拡張し傷害後,1%コレステロール負荷食を10週投与による動脈硬化モデルを作成した.NPe6投与1時間,6時間投与後の蛍光分布では内膜肥厚部に選択的に集積するのが確認された.さらにPTCAカテーテルにより拡張後では,NPe6は肥厚内膜にとどまらず中膜までの分布が認められた.動脈傷害モデルでは同様に中膜まで取り込まれ,非傷害部では認められなかった.HPLCによる組織内濃度の検討でも投与後早期より傷害血管へは高い濃度を認めており,蛍光観察と一致した.B:血管外よりの照射では100mW/cm^2,100J/cm^2で,照射側は良好なapotosisを認めたが,照射対側の効果は一定しなかった.今回のBLDを使用した血管内照射では,バルーン傷害及びNPe6投与1時間後のPDT施行時の照射エネルギーを100mW/cm^2,1J/cm^2まで低下させてもバルーン傷害動脈の全周性のapotosisが認められた.さらに2週間後の病理標本では,2.5mg/kg以上の投与で非PDT群に比して有意に内膜肥厚が抑制された.このことから,Low-dose laserによるPDT治療が可能と考えられ,熱効果の全くない安全性の高い治療が可能となることが示唆された.この内容は2000年3月開催の日本循環器学会にて発表予定.現在NPe6の長期成績(4週間,3ヶ月)を検討中.さらに平成12年度は大動物での効果及び動脈硬化モデルでのインターベンション傷害及びPDTの併用による再狭窄効果の検討実験を予定している.さらにNPe6は血中でアルブミンと1:1で結合が得られることから,mal-BSA+NPe6投与を作成して検討をすすめる予定.
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