本研究の目的は虚血性心疾患あるいは下肢の阻血で、外科的血行再建術の不可能な症例に、自家組織を移植するか、培養した線維芽細胞を導入することで、内因性サイトカインの産生を促進して血管新生を誘導することが可能であるかの基礎的検討を行う。血管新生過程を知るのを目的に経時的に同一部位で観察することが可能な家兎の耳介に作成した観察窓を用いた。方法は家兎の両耳介にアクリル樹脂製透明窓(Rabbit Ear Chamber;REC)を装着して微小循環用窓を作成した。観察窓を生体顕微鏡で観察しビデオに録画した。術後1日目には透明な組織浸出液で満たされ、円形の細胞が拍動性に方向を変えながら動いていた。1週間目には線維芽細胞やマクロファージが窓の表面に付着したが、円形の炎症細胞が拍動性に動いていた。2〜3週間目には周囲から鮮赤色の出血およびループ状の血管が観察窓の視野内に出現した。血管から赤血球がつまった瘤状の突出がみられ、周囲から中心に向かって伸展および分枝してくる細小血管は先端に鮮赤色の出血を伴っていた。3週目以降は観察窓内には細く直線的に走行する動脈、および屈曲した太い静脈が形成された。4週目で血管新生は完成したが、5週目でも変化していた。また、REC法において止血材料を用いた血管新生の過程を観察した。止血材料を用いない場合と比べて、初期の出血が少なく早期に血管新生が認められた。但し綿状コラーゲン製止血材では血管新生が完成したが、アビテン、タココンブでは止血材料の影響でREC内全体には血管は再生しなかった。我々の目指している冠動脈バイパス術時に内因性サイトカインの力を借りてグラフト壁から新生血管を誘導し、吻合可能な虚血部へ側副血行路を形成するというハイブリッド型血行再建術は、外科的直接血行再建術にさらなる虚血改善を望めるため、この研究をさらに進めたい。
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