ストレス蛋白(HSP70)の誘導により、創傷治癒におけるストレス蛋白(HSP70)の生体内での役割を明らかにした。ラットを麻酔下にて熱ショック前処置(恒温漕に入れ直腸温42℃、15分)を行った。8時間後に犠死させ、各臓器(心、肺、肝、消化管、皮膚)における発現を抗HSP70抗体によるウェスタンブロットにより検討した。また、消化管吻合、および皮膚切開創治癒モデルについて破裂圧や抗張力測定により生理学的強さについて検討した。また、ハイドロキシ・プローリン測定やI型、III型コラーゲンmRNAの増幅の有無を検討した。 HSP70を誘導することは可能であったが、その発現は生体内では微弱であった。これは経過時間をもっと長く観察する必要があると考えられた。熱ショックの他、高圧酸素療法を用いてHSP70を誘導も試みたが、これは治療によるものかどうか明らかではなかった。 創傷治癒に伴ったHSPの発現がみられたが、これを調節することは現段階では困難であった。しかし、敗血症ラットを用いた研究では早期に栄養を開始することにより体重減少を抑制し、大腸吻合部治癒を促進することが明らかとなった。また、吻合手技により創傷治癒機転に影響を与えることを明らかにした。吻合方法により吻合の強さには明らかな差がなかった。しかし、肉芽の量が異なり、断端接合では最も少なく、漿膜接合では多かった。それに比例して、組織再構築が行なわれており、生化学的な検討では断端接合でコラーゲンが最も多かったが、漿膜接合では総蛋白量が多かった。大腸吻合部では縫合手技により創傷治癒機転が異なることが示唆され、血管新生や組織再構築を制御することにより、創傷治癒を促進する可能性が示唆された。
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