マウス敗血症および出血性ショックモデルにおいて広範なリンパ組織にapoptosisが誘導されるが、手術侵襲下においても種々の炎症性サイトカインの誘導によりSIRSが引き起こされ、敗血症やショックと同様の生体反応が展開されていると考えられる。これらの病態における細胞死の形態、apoptosis誘導の機序を解明することにより、敗血症・出血性ショック・外科手術後の免疫抑制、臓器不全発症の防止につながるものと考えられる。 1.外科侵襲時におけるリンパ球減少とリンパ球apoptosisの関係 侵襲程度の異なる種々の手術後の末梢血リンパ球数、サブセットを術前および術後経時的に追跡測定した。術後3日目の末梢血リンパ球数は侵襲の大きさに相関して減少した。術後1日目のCD4/8も侵襲程度と相関して減少した。Annexin Vを用いてFACSによりapoptosis細胞数の割合を検討したところ、高度侵襲症例でapoptosisに陥ったリンパ球の割合が高かった。炎症性cytokineであるIL-6を術後経時的に測定した結果では、IL-6は手術侵襲の大きさに相関して高値を呈したが、リンパ球apoptosisとの挿管は認められなかった。 2.今後の展開 (1)術後の抗炎症性cytokineの変動とapoptosis細胞数の相関を検討することにより、リンパ球apoptosis誘導のtrigger、mediatorを検索する。 (2)動物実験にて、これらmediatorの投与または阻害によりリンパ球apoptosisが制御できるか否かを検討する。
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