1.敗血症におけるリンパ組織apoptosisの誘導 C3H/HeNマウスを用いたCecal Ligation and Puncture(CLP)敗血症モデルにおいては、胸腺皮質・脾白色髄・小腸Peyer's patch等の広範なリンパ組織にapoptosisが誘導された。LPS腹腔内投与による敗血症モデルではapoptosisは胸腺のみに誘導されることより、脾・小腸などのリンパ組織ではendotoxinに依存しないapoptosis誘導の機序が考えられた。また、これらの組織でのapoptosisは抗TNF抗体の投与でも抑制されず、TNFにも依存しない機序が考えられた。 2.出血性ショックにおけるリンパ組織apoptosisの誘導 マウスのhemorrhagic shock/Resuscitation(HEMS)モデルにおいてもCLPモデルと同様の組織、細胞内局在、すなわち胸腺皮質・脾白色髄・小腸Peyer's patchにapoptosisが誘導された。脾・小腸のapoptosisはSODおよび低分子量のSOD mimeticであるMn-TBAPにより抑制された。これらはまたHEMSマウスの生存率を向上させたことより、ショック/蘇生時のSOD製剤の治療的効果も期待できると考えられた。 3.外科侵襲後のリンパ球apoptosisの誘導 侵襲時にはリンパ球数が低下するが、我々はリンパ球のサブセットを術後経時的に測定し、CD4+細胞が減少することを確認した。同時に採取した血液からリンパ球を分離し、18時間培養したリンパ球のapoptosis assayを行い、手術侵襲下におけるリンパ球apoptosis誘導に関して臨床的検討を行ったところ、高度侵襲を伴う外科手術では敗血症におけると同様に末梢血リンパ球のapoptosis細胞が増加することが明らかとなった。敗血症症例においても術前、術後の末梢血リンパ球数、サブセットを経時的に追跡測定した。また摘出標本からリンパ組織を採取し、DNA電気泳動、TUNEL染色、FACS等の方法を用いてapoptosis assayを施行したところ、敗血症患者においてもリンパ球のapoptosisが増加していることが示唆された。グラム陰性菌に起因した敗血症症例においてPMX(エンドトキシン吸着)を行った症例でも同様に、術前後のリンパ球apoptososを検討しているが、現在までのデータではPMXのよりリンパ球apoptosis抑制効果は確認されていない。
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