[目的]これまでに実験動物を用いてのエンドトキシン血症ラット、マウスにおけるrecombinant human HGFを外因性に投与することによる、その生体防御効果は他施設において既に報告されている。肝硬変合併肝癌での肝部分切除後に高率にかつ高濃度にエンドトキシン血症が出現することが知られている。また同時に血中HGF濃度が術直後より増加し、他の増殖因子と共に残存肝の再生を促進しているのではないかと推察されている。そこで今回我々はラット硬変肝部分切除後の血中および残存肝における内因性HGFの発現動態(活性型、非活性型)、および血中エンドトキシン濃度との相関関係を検討することを目的とする。[方法]SD系雄性ラットを用い、1%Dimethylnitrosamine(1mg/kg body weight)を週3回連続4週腹腔内投与にて肝硬変を作製する。45%肝部分切除術を施行し、切除後24時間にて腹部大動脈より脱血犠死施行。採取した血漿、肝組織サンプルを調整しmonoclonal antibody against the heavy chain of HGFを用いて、western blottingを行い非活性型および活性型HGFの発現動態を検討する。同時に血中エンドトキシン濃度を測定する。[結果]DMN誘発肝硬変ラット血漿中において非活性型、活性型HGFの発現は認められず、肝部分切除を行ってもそれらの増加は認められなかった。肝組織中では非活性型HGF発現が高度に認められたが、活性型HGFは認められなかった。肝部分切除後においては非活性型HGFの発現が増加し、活性型HGFも少量ながら認められた。血中エンドトキシン濃度は肝切除後24時間で切除前と比べ有意に高値を示した。[考察]肝硬変ラットの肝組織では活性型HGFは認められず、肝部分切除を行うことにより微量の活性型HGFが認められた。以上のことより肝硬変肝部分切除後の肝再生遅延の要因の一つとして残存肝中のHGFが活性化されていないことが推察された。またこの内因性HGFを活性化することにより、抗エンドトキシン作用を示すものと考えられた。
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