| 研究概要 |
l.乳癌と遺伝子不安定性の検討
予後の判明している乳癌87例のパラフィン包埋標本からFISH法により1,11,17番染色体の染色体数的異常を解析した.染色体数的異常は1,11,17番染色体でそれぞれ87例中38例(44%)、29例(33%)、32例(37%)に認めた.染臨床病理学的困子との関連で、17番染色体monosomy群はDisomy群との比較で有意に高頻度にリンパ節転移を認めた.染色体数的異常の予後困子としての有用性を検討するために5年健存率を検討すると、5年に健存率は17番染色体Aneusomy群(58.7%)は、Disomy群(87.1%)と比較して有意に予後不良であり、なかでもPolysomy群(49.0%)は最も不良であった.多変量解析の結果、17番染色体数的異常はP=0.052とBorderline effectを示した.さらに染色体数的異常と健存期間との関連を検討すると17番染色体Aneusomy群はDisomy群と比較して2年未満の早期再発を有意に高頻度に認めた.1,11,17番染色体数的異常の蓄積と予後との関連を検討すると、三つの染色体全てに染色体数的異常を認めなかった32例では二年未満の早期再発は無く、無再発群が27例(84%)だったが、三つの染色体全てに数的異常を認めた11例では3例(27%)に二年未満の早期再発を認め、染色体不安定性と再発時期の間に有意な関連を認めた.以上のことから17番染色体数的異常が乳癌予後に重要な影響を及ぼし、染色体数的異常の蓄積(染色体不安定性)が乳癌の生物学的悪性度を反映することが示唆された.
2.免疫組織染色法を併用した微小リンパ節転移の検出
現在までに72例の乳癌液窩リンパ筋の転移珍断を多切片でのH.E.染色法とcytokeratin免疫組織染色法とで比較検討した.72例中H.E.染色で転移陽性であった乳癌13例はいずれも免疫組織染色で転移陽性と診断された.一方、H.E.染色で転移陰性であった59例中4例(6.8%)に免疫組織染色で微小転移が検出された.
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