研究概要 |
1.染色体数的異常と乳がん予後:乳がん87例を対象にパラフィン包埋標本からFISH法で遺伝子異常が比較的高頻度に認められている1,11,17番染色体の数的異常を解析し予後との関連を検討した.17番染色体aneusomy乳がんの5年健存率は59%でdisomy乳がんの87%と比べ有意に予後不良であった.また17番染色体aneusomy乳がんはdisomy乳がんに比し術後2年未満の早期再発が多く見られた.3つの染色体の解析から,数的異常を認めない乳がんでは術後2年以内の再発はなかったが,全ての染色体に数的異常が認められた乳がんの27%に2年未満の再発が見られた. 2.癌関連遺伝子発現から検討した乳癌生物学的多様性:165個の癌関連遺伝子を一度に発現解析できるmembrane-based hybridization array法を用いて42例の正常乳腺組織と乳癌組織での遺伝子発現を比較し発現異常遺伝子の関連の関連性を検討した.正常組織と比べ癌組織で5倍以上の発現上昇あるいは発現低下がみられた遺伝子を高発現または低発現遺伝子とし,また42例中7例以上の症例で高発現あるいは低発現であった遺伝子に限定すると,12遺伝子が高発現で21遺伝子が低発現であった.高発現遺伝子のなかでは細胞外マトリックス分解酵素(MMPs)が多く,低発現遺伝子ではアポトーシス関連遺伝子が多く見られた.臨床病理学的因子の関連からFGFR-2発現低下は腫瘍径の増大と有意な相関がみられた.本法による遺伝子発現解析から乳癌の生物学的多様性が示唆され,同時に本法によって乳癌の新しい生物学的予後因子が同定できる可能性がある.
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