研究概要 |
100-140g(4W)SDラットに対して1%ジメチルニトロサミン(DMN)を1μl/mg週3回連続で3週間腹腔内注入することによりラット肝硬変モデルを作成した。肝硬変モデルに対して,ヒト肝細胞増殖因子(HGF)を肝動脈より導入するHGF群とLac-Z遺伝子を導入するコントロール群を作成し,肝硬変におけるHGF遺伝子導入の有効性を検討した。遺伝子導入後,2,7,14日目に門脈圧測定を行った後偽死させ,血清および肝組織を採取した。肝組織における肝線維化率をAzan-Mallory染色像からNIH imageで測定した。なお,遺伝子導入後もDMNの投与は継続している。肝組織における検討では,コントロール群におけるLacZ遺伝子の発現が効率に認められ,HGF免疫組織学的検討でもHGFの高率な発現が認められた。また,ELISAで測定した肝組織中のHGFは7日目から14日目において発現の増加が認められた。両群での比較では,HGF群では2日目から7日目にかけて線維化率が2.33%から1.36%に減じたのに対し,コントロール群では2日目4.66%から5.77%と増加した。門脈圧はHGF群では2日目10.2±2.1mmH_2Oから14日目12.4±1.8mmH_2Oの121%の上昇に対して,コントロール群では2日目11.5±2.5mmH_2Oから16.7±4.0mmH_2Oの145%の上昇率であった。血清での生化学検査では,HGF群では2日目から14日目へとGOT,GPTともに低下が認められたが,コントロール群では,上昇を認めた。以上より,ラット肝硬変に対するHGFの遺伝子導入は,肝組織における肝の線維化を抑制するとことで,肝障害を緩和し,かつ門脈圧亢進をも抑制する結果が得られた。
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