研究分担者 |
長濱 俊一 福岡歯科大学, 歯学部外科学講座, 助手 (70279321)
犬塚 貞明 福岡歯科大学, 歯学部外科学講座, 講師 (40258596)
是永 大輔 福岡歯科大学, 歯学部外科学講座, 教授 (90170414)
安田 光宏 福岡歯科大学, 歯学部外科学講座, 助手 (90269043)
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研究概要 |
【はじめに】細胞周期の制御機構にcyclinは重要な役割を果たしており、制御機構の異常と癌化との関連が注目されている。しかしG2/M制御作用を持つcyclin B(C-B)の発現に関する報告は少ない。我々は大腸癌におけるC-Bの発現の臨床的意義について検討した。 【対象と方法】進行大腸癌(DukesB,C,D)の手術症例109例のパラフィン固定標本を用いて、C-B,Ki-67,PCNA,p53の各抗体による免疫染色を行った。C-B染色の判定は核、細胞質の何れかが染色されているものを陽性とし、Ki67,PCNA染色の評価にはCAS200を用い客観的に判定した。 【結果】C-Bの発現率は109例中62例(56.8%)であった。臨床病理学的因子との関連は年令、性別、組織型、肉眼型、深達度に関しては認められなかった。一方、進行度に関してはC-B陽性例でDukes B66%,C,D34%、陰性例では各々44%,55%,とDukes Bの症例が有意に多かった(p=0.025)。また、C-B陽性例のリンパ管侵襲(ly)陽性率は25.8%(16/62)であり、陰性例46.8%(22/47)に比して有意に少なかった(p=0.023)。同様に静脈侵襲(v)陽性率は21.0%(13/62)であり、陰性例46.8%(22/47)に比して有意に少なかった(p=0.0004)。さらにリンパ節転移陽性率についてもC-B陽性例では30.6%(19/62)と陰性例の51.1%(24/47)と比較して有意に少なかった(p=0.03)。しかしC-B陽性例と細胞増殖活性の指標であるKi-67、PCNAやp53との間に相関は認められなかった。単変量解析ではC-Bは年令、Dukes分類、ly、v、Ki-67とともにリンパ節転移に影響を及ぼす有意な因子であったが、Logistic判別分析による多変量解析では、lyのみが有意な関連因子と判された。予後との関連をCox解析により多変量解析を行ったがC-Bは有意な因子ではなかった。 【まとめ】G1サイクリンに対してG2/Mを制御するcyclin Bに関してはC-B高発現群にリンパ節転移が少ない傾向が認められた。以上よりC-Bの発現とリンパ節転移の間に何らかの関連性が示唆された。
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