研究概要 |
【はじめに】細胞周期の制御機構にcyclinは重要な役割を果たし、癌の転移浸潤との関連が注目されている。大腸癌、胃癌におけるcyclin B(C-B)発現を免疫組織学的に検索し、その臨床的意義を検討した。【方法と結果】研究1(平成11年度):進行大腸癌109例の切除標本にC-B,Ki-67,PCNA,p53の免疫染色を行った。C-B陽性例は109例中62例(57%)であった。腸性例では陰性例に比してDukes Bが有意に多く(p<0.05)、リンパ節転移(pN)やリンパ管侵襲(ly)の割合は低率であった(p<0.05)。増殖活性の指標であるKi-67,PCNA,p53とC-B発現との間に相関は認められなかった。単変量解析ではC-Bは年齢、Dukes分類、ly、v、ki-67とともにリンパ節転移の関連因子であったが、Logistic判別分析の結果、lyのみがリンパ節転移の有意な影響因子と判明した。研究2(平成12年度):切除胃癌61例を分析した結果、C-B陽性例は61例中32例(53%)であり、平均年齢は陰性例ほうが陽性例より有意に低かった(p<0.05)。病理学的因子別に分析すると、C-B陰性例では陽性例に比して低分化腺癌、浸潤型が明らかに多く、また、pN2-4、stageIII-IVなど高度進行例が有意に多かった(p<0.05)。多変量解析の結果、組織型がC-B発現に有意に関連する因子と判定された。【まとめ】cycli DやEなどのG1サイクリンは細胞周期を促進する正の細胞周期調節因子であり、リンパ節転移との関連が報告されている。本研究の結果、G2/Mを制御するC-Bに関しては逆にリンパ節転移を制御する傾向が認められた。現時点では詳細な機序について言及できないが、cyclin Bの発現とリンパ節転移との間に何らかの関連性が示唆された。
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