研究概要 |
はじめに 悪性腫瘍の中でも膵癌は最も予後不良の癌腫の一つであるが、その理由として膵組織自体が体腔の深部にあるため、種々の画像検査でも早期の異常を見つけるのが困難なことによる。したがって膵癌による癌死を防ぐためには従来の方法以外の早期発見の手段を見つけることが急務となる。そこで最も有効と思われる手段は血液中あるいは膵液中の膵癌特異性物質の検出である。そこで、われわれは膵液中の新たな腫瘍マーカーを見つけるべく以下のような実験を行った。 実験概要 膵臓癌患者に対して施行される手術.膵頭十二指腸切除術(PDまたはPPPD)後に患者の膵液チューブから膵液を採取した.その後,膵液を透析膜を用いて透析し,析出した物質を冷却遠心にて沈殿させ上清を分離した.上清から得られたものを,イオン交換樹脂のオープンカラム(弱陰,弱陽,強陽の3つ)を用いて糖タンパク質を5種類分離した.その糖蛋白質をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて分析し,fucose richであることを確認し,目的とする高フコース糖蛋白質の精製過程を確立できた.その中で,構造解析がされている3種類の高フコース糖タンパク質について実験を進めた。その結果これらの糖タンパク質はトリオマンノシル構造を持つN-グリコシド型糖鎖で非還元末端にはフコースが高率に結合しそれぞれ2本鎖構造、3本鎖構造、4本鎖構造を持っていた。現在3種類それぞれについてウサギをもちいたポリクロナール抗体の作成をおこなっている。抗体が完成した後に,正常人と膵癌患者での血中濃度の検索,膵液中での濃度の検索,切除標本を免疫染色し,この高フコース糖蛋白質の産生部位の確認を行う.
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