研究概要 |
目的 膵癌は悪性腫瘍の中で最も悪性度が高く、臨床上解決されていない大きな問題となっている。この大きな理由は膵癌の早期診断が困難なことにある。そこで早期診断には膵癌に非常に感度が高く、特異性の高い腫瘍マーカーの開発が不可欠となる。 これまでわれわれは国内外で初めて膵液より高フコース糖タンパク質を発見。さらに糖鎖構造を明らかにした。そこで本研究ではこの膵に特異的とされる高フコース糖タンパク質と膵癌の関係を明らかにし、腫瘍マーカーとしての評価を行うことを目的としている 糖タンパク質の精製と免疫 患者膵液より陽イオン陰イオン交換カラムクロマトグラフィー法により3つのサブタイプGP-2,GP-3,GP-4の高フコース糖タンパク質を分離精製した。このうちGP-2に対し抗体を作製した。ポリクロナール抗体の作成はカルボジイミドカップリング方にてカップリングさせた糖ペプチドを準備し、ウサギに2羽免疫し,ELISAにより抗体の産生を評価,確認した。 Western Blottinによる分子量の同定 正常な膵組織のwestern blottingした.Blottingの結果,可溶性画分の範囲に分子サイズ約79.5kdaのバンドが1本出現した.よってGP-2は,分子サイズ約79.5kDaで可溶性画分に存在していることが示唆された. 免疫染色による産生部位の同定 精製した抗GP-2抗体を用い,ヒト正常膵組織に酵素抗体法染色(間接法)した。免疫染色の結果,膵腺房細胞の胞体の一部が染色された. 血中濃度検索 正常人9人と膵癌患者(進行癌患者と術後再発患者)6人から採血しその血清を,先の精製した抗体を用い比較検討した.正常人の血中濃度は173.4μg/dl,膵癌患者の血中濃度は146.4μg/dl,で比較検討の結果膵癌患者の血中濃度が正常人よりも有意に低いことがわかった.以上の結果は数報の論文にまとめられている。
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