研究概要 |
平成11年度はラットを使った侵襲モデルで研究を行なった.ウィスター系雄性ラットに対して、皮下脂肪、内臓脂肪にプローブを留置し、その後に肝切除、大量出血、カテコラミン投与、LPS投与などの各種の外科的侵襲をラットに加え、皮下脂肪,内臓脂肪における脂肪分解の変動を、microdialysis法を用いて組織内のグリセロール濃度を指標として同時に測定し、検討した.大量出血、カテコラミン投与により、両脂肪組織の脂肪分解が迅速に亢進することが認められ,またその程度、time courseにおいて両脂肪組織に差のないことが認められた.LPS投与では、投与2時間後より脂肪分解が亢進すること、また、内臓脂肪よりも皮下脂肪の反応が大きいことが認められた.また,この脂肪分解の大部分は、脂肪組織内の交感神経末端から分泌されるカテコラミンが介在していることが明かになった.従来の研究では、内臓脂肪の脂肪分解を優位としており、本研究の結果はきわめて興味深いものとなった.肝切除を行うモデルは、侵襲が過大なためか、実験途中でラットが死亡し結果を出すにいたらなかった。また、侵襲時の脂肪組織内のサイトカイン,レプチンなどをELISA法にて測定したが,結果は測定下限値をしたまわっており、微量であるために測定不能であるものと考えられた.現在,このラット侵襲モデルを用いて、侵襲前にステロイドを投与し、ステロイド前投与が脂肪分解に及ぼす効果を検討中であり、脂肪細胞中の各種サイトカインのmRNAの発現を計測したが,微量のため測定結果が安定せず、RT-PCR法を用いて継続検討中である.
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