腫瘍増殖に不可欠な腫瘍血管の誘導を阻害して腫瘍の増殖を抑制する抗体と、殺細胞効果を有する制癌剤との複合体を作製して、その複合体による癌化学療法を行うことで、抗体単独、あるいは、制癌剤単独よりも優れた抗腫瘍効果が得られるとの仮設のもと、臨床における転移性肝癌の治療成績向上を目的に、抗腫瘍血管増殖因子抗体(抗血管内皮増殖因子(VEGF)抗体)と制癌剤(マイトマイシンC(MMC))の複合体を作製して、その抗腫瘍効果増強の有無を検討した。すなわち、 1、複合体の作製:BrCN法を用いて市販の抗VEGF抗体にMMCをcouplingさせて、抗VEGF抗体と制癌剤の複合体(VEGF-MMC複合体:1molのVEGF抗体に約2molのMMCが結合している)を作製した。 2、複合体の抗体活性と薬剤活性の検討:VEGF-MMC複合体の抗体活性を、VEGF発現癌細胞培養株(ヒト大腸癌由来LS174T細胞)に対する抗体接着能として検討した結果、抗体活性は阻害されることなく保持されていることが判った。また、VEGF-MMC複合体の薬剤活性を、MTT法によるVEGF発現細胞の増殖抑制効果で検討した結果、MMC活性値としては1/10程度に抑えられていることが判った。 3、複合体による抗腫瘍効果の検討:LS174T細胞に対する増殖抑制(制癌)効果を、制癌剤単独とVEGF-MMC複合体とでin vitroで比較した結果、VEGF-MMC複合体では制癌在単独に比べて約50倍の増殖抑制効果を持つことが判った。
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