研究概要 |
1.大腸大量切除後の消化管における水チャネルの役割を残存小腸・大腸における水チャネル遺伝子の発現変動から検討する目的で、ラット大腸亜全摘モデルを作製し、3週目、6週目に犠牲死。上部・中部・下部小腸、残存大腸よりmRNAを抽出。RNase Protection AssayにてAQP1,3,4,8の発現変動を確かめた。残存直腸においてAQP8 mRNAの著明な発現増強を認めた。小腸におけるAQP1,3,4,8mRNAの発現変動は認めなかった。AQP8 mRNAの正常大腸に於ける発現は中部大腸に強く、最上皮にその発現を認めた。以上より、大腸における水分吸収に水チャネルを介した上皮細胞内経路が関与し、水チャネルの発現増強が術後のadaptationに寄与していると考えられた。また、小腸に関して、水チャネルの明らかな発現の変化は認められなかったが、今回検討したAQP1,3,4,8の正常小腸における発現は少なく、小腸で優位に発現する水チャネルの存在の可能性が示唆された。 2.ヒト小腸(空腸)で優位に発現する水チャネル遺伝子を発見した。塩基配列解析によると現在まで未発見の遺伝子であり、その機能発現について検討を加えた。今後はヒト回腸で優位に発現する水チャネルを同定し、当科で行っている潰瘍性大腸炎ならびに家族性大腸腺腫症患者に対する大腸全摘術・W型回腸嚢再建術における回腸嚢での水チャネルの発現の変化を確認する予定である。
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