本年度においては3領域リンパ節郭清が施行された術後5年以上観察されているか再発が確認されている食道癌切除症例を検索し、切除時に組織学的リンパ節転移陰性であった38症例を特定した。この38症例より摘出されパラフィン包埋されたリンパ節2845個を研究材料とし、各リンパ節より5連続薄切切片を作製し、うち2枚の切片に組織学的転移陰性を再確認するためヘマトキシリン・エオジン(HE)染色を行い、残る3枚の切片で抗サイトケラチン抗体(AE1/AE3カクテル)を用いてStreptoavidin-biothin complex-peroxidase(SAB-PO)法にてサイトケラチン陽性細胞、すなわちMicro-tumor cellの検出を行った。この検出に先立って、オリンパス社製システムデスカッション顕微鏡を購入した。研究対象とした38症例のうち1例で組織学的転移が新たに認められたためこの1個は研究対象から除外した。その結果、Micro-tumor cellは検索した2774個のリンパ節の29個(1.0%)、37症例のうち14症例(38%)に認められた。症例あたりのMicro-tumor cell陽性リンパ節個数分布は1〜7個(平均2.1個、中央値1.5個)であった。研究対象症例の食道癌原発巣は全例がAE1/AE3免疫染色で陽性を示した。次年度以降は本年度の研究で特定されたMicro-tumor cell陽性例(n=14)の臨床病理学的特徴を陰性例(n=23)と比較検討するとともに食道切除術が施行される食道癌患者にInformed consentを得た上で手術時に胸管リンパ液、骨髄液を採取し、凍結保存した後にサイトケラチンm-RNA発現の有無、すなわち検体中のMicro-tumor cellの有無を判定する予定である。
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