研究概要 |
今年度は、膵臓癌におけるVEGFとreceptorの発現、リンパ管内皮増殖因子であるVEGF-Cの発現を中心に解析を行った。 膵臓癌組織において、VEGFとそのreceptorであるKDR、flt-1が共発現していることを免疫染色で確認、膵臓癌細胞株のうちCapan-1,AsPC-1,MIAPaCa-2においてもこれらのligand/receptorの共発現がRNA,蛋白レベルで確認され、VEGF/VEGF receptorの共発現が血管新生を介した系のみならず直接的な細胞増殖を誘導している可能性が示唆された。実際に、Capna-1を用いたbinding assayでこれらのligand/receptorのbindingが確認され、VEGF刺激によりreceptorのリン酸化、mitogen-activated protein kinase(MAPK)の活性化、核内転写因子であるc-fosの発現を介して細胞増殖が誘導されることを証明した。また、MAPKに対する選択的inihbitorを用いた抑制試験で有意にその細胞増殖が抑制されることから、MAPKカスケードをtargetとした治療の可能性も示唆された。これらの結果は、固形腫瘍において腫瘍細胞自身がVEGF ligand/receptorを共発現し、その増殖に関与していることを始めて報告したものである。 また、リンパ管内皮増殖因子であるVEGF-Cが同様に膵癌組織で発現され、検索した6種すべての膵癌細胞株でもその発現がRNAレベルで確認された。またその発現がVEGFの発現とは独立したもので、リンパ節転移、リンパ管侵襲と有意に相関していることも確認され、膵臓癌の転移進展形式を考える上で重要な所見と考え、今後さらにreceptorの発現、発現の制御機構について解析を進めていく予定である。
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