研究概要 |
昨年度はヒト大腸癌同所移植肝転移モデルを用いて、新規経口MMP阻害剤MMI-166の腫瘍血管新生抑制作用による、ヒトへ大腸癌肝転移阻害効果について明らかにした。今年度はMMI-166と抗癌剤Mitomycin C(MMC)及びその併用療法を行い、転移抑制効果、抗腫瘍効果を比較検討した。ヒト大腸癌TK-4をヌードマウスに同所移植し、コントロール群(1群)、MMC単独投与群(2群,2mg/kg/week ip)、MMI-166単独投与群(3群,200mg/kg/day経口投与)、MMC,MMI-166併用群(4群)の4群を設定し、移植後5週間投与し、肝転移及び移植腫瘍重量、腹膜播種について評価した。移植腫瘍重量は、1群:1.102g、2群:0.807g、3群:1.175g、4群:0.501gでありMMC投与した2,4群で有意な腫瘍増殖抑制効果を認めた。肝転移は個体数で、1群:9/15、2群:7/15でありMMI-166を投与した3,4群では肝転移を認めなかった。腹膜播種は個体数で1群:13/15、2群:13/15、3群:5/14、4群;5/13とMMI-166投与群で有意な播種の抑制が認められた。MMI-166経口投与によって有意な肝転移抑制効果と腹膜播種の抑制を認めたが、MMC単独投与ではその効果は認めなかった。MMC投与によって腫瘍成育抑制効果を認め、さらにMMI-166との併用でその効果は増強された。腫瘍退縮効果は抗癌剤、転移阻害効果は血管新生阻害剤が主に作用し、それらの併用投与により抗癌剤の低用量化が可能な事が示唆された。手術療法による制御が不可能な進行癌患者には、低用量の抗癌剤と血管新生阻害剤の長期投与による腫瘍と転移制御による延命効果が期待できるものと思われた。
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