研究概要 |
1.大腸癌肝転移モデルの樹立とCOX-1,COX-2,VEGF mRNAの定量 我々が樹立したヒト大腸癌株TK-4を使用した。ヌードマウスの皮下に移植した群をSC群、seed and soil理論に基づいた同所(盲腸)移植群(CI群)と、腹膜縫着による腹膜転移モデル(PI群)を作成し移植8週後に体重、腫瘍重量、肝転移数等を評価した。COX-2、VEGFmRNAはTK-4に高発現していた。肝転移はCI群で高率に発現し、COX-2 mRNA発現はCI群で有意に高く、肝転移とCOX-2mRNAの相関が示唆された。VEGF mRNAは各群間に差は見られなかった。またCOX-2の組織免疫学的検討でも、CI群でのCOX-2発現が高かった。 2.大腸癌肝転移モデルの肝転移発現におけるCOX-2の役割 以上の現象にCOX-2がどの経路を介し関与しているかを検討した。アポトーシスインデックス(AI)と微小血管密度(MVD)を測定し、COX-2との関連を検討した。ApoptosisとCOX-2mRNA発現量には負の相関が見られ、COX-2mRNA発現量とMVDには相関は見いだせなかった。 3.大腸癌切除症例におけるCOX-2発現の検討 大腸癌切除症例76例(男46例、女30例)において、COX-2発現の関連を検討した。COX-2蛋白陽性例は39例(51%)で、COX-2蛋白陽性と、性、組織型、深達度、リンパ節転移、腹膜播腫との間に相関はなかったが肝転移症例において有意にCOX-2高発現症例が多かった(12例中10例)。COX-2蛋白発現が高いとAIが低い傾向にあった。 4.COX-2阻害剤による肝転移抑制 以上よりCOX-2発現は大腸癌肝転移において重要であり、COX-2阻害剤により転移阻害効果が得られることが期待される。現在COX-2阻害剤による大腸癌肝転移抑制効果の検討中である。
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