研究分担者 |
梛野 正人 名古屋大学, 医学部, 講師 (20237564)
神谷 順一 名古屋大学, 医学部, 講師 (70194975)
二村 雄次 名古屋大学, 医学部, 教授 (80126888)
小田 高司 名古屋大学, 医学部, 助手 (30311715)
湯浅 典博 名古屋大学, 医学部, 助手 (00303610)
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研究概要 |
最近のラット腸管を用いた研究(Gastroenterology,1997;112;1971-8)で、血管内皮細胞上の接着分子の1つであるICAM-1の発現量と白血球浸潤の程度が、腸管内容のうっ滞の程度と関連することが示された。そして、その関連が腸内細菌により介在される可能性が示唆された。しかし、この研究では抗生剤の経口投与が行われており、それによって得られる結果が細菌数の減少によるものか菌交替現象によるものかの判別が困難であった。そこで私たちは無菌マウス(Germfree mice)を用い、常在菌叢が種々の接着分子の発現にどのよりな影響を与えるかを検討した。 <方法>Germfree miceとそのコントロールで、血管内皮上の種々の接着分子(ICAM-1,ICAM-2,VCAM-1,E-selectin)の発現を臓器別に定量し(in vivo二重標識抗体法:Am J Physiol,1995;269;H1955-64)、wild-typeのマウスにおける発現量と比較、検討した。 <結果>Germfree miceでのICAM-1の発現は、消化管、肝、膵、骨格筋、皮膚で有意に低値であった。これらはBackground miceの便をGermfree miceに経口投与して腸内細菌叢を形成させると、コントロールのレベルまで回復した。肺、心、脳でのICAM-1発現量は2群間でほぼ同程度であった。他の接着分子の発現に関しては、どの組織でも2群間に有意差を認めなかった。 <結論>これらの結果より常在菌叢は消化管を含む特定の臓器で、ICAM-1の発現に影響することが証明された。また、菌の量的な変化が、接着分子の発現を介して、腸管内容物のうっ滞と関連する腸炎などの炎症性疾患の発症や活動性と関連する可能性が示唆された。
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