膵島移植は、移植手技の安全性、簡便性の観点から、幅広い応用が期待される治療法であるといえるが、いまだ解決すべき点も数多く存在する。その一つとして、移植膵島の急性拒絶反応を早期に的確に診断することが極めて困難であることが挙げられる。現状では、移植後の血糖値の変化をモニターする以外に有効な方法が存在しない。 これに対し本研究では、実際の臨床に極めて近い大動物(イヌ)を用いて、急性拒絶診断法の確立に向け、実験的検討を進めている。 現在までのところ、実際の臨床で繁用されている全自動膵消化法を用いて、イヌ膵から充分量のviableな膵島を分離しうることが明らかとなった。また、得られた膵島を門脈内に自家移植することで、長期間正常血糖を維持することができた。 また、免疫抑制剤を使用しない同種膵島移植モデルにおいて、移植後血糖値の変化と肝酵素値との関連を検討しているが、移植後一週間目程度より血糖値の上昇を認め、急性拒絶反応がこの時期に既に起こっていると考えられた。一方、肝酵素、中でもGOT、GPTは血糖値の上昇に先行して上昇することが判明した。このような変化は自家移植においては認められず、同種移植時においてのみ認められ、急性拒絶に関与した反応であると考えられた。以上より、GOT、GPT値は膵島移植時の急性拒絶のマーカーとなりうることが示唆された。 今後は、更に症例数を増やすとともに、これら以外にもPSTI、PLA2等がマーカーとなりうるかどうかを検討していきたい。また、経時的に組織学的検索も行い、上記の変化と組織学的な変化の関連性についても検討を加える予定である。
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