研究概要 |
現時点までに、シスプラチン含有マイクロスフェア-(以下CDDP-MS)の作成に当たり、溶出速度、組織移行、副作用について検討し、以下の治療・実験に最適なCDDP-MSを選択した。 1.CDDP-MSの抗腫瘍効果について(FF6腫瘍をDAラットの腹壁に移植した皮下腫瘍モデルを作成した2日後に治療し、腫瘍増殖抑制と体重変化について検討した。) (1)CDDP力価5mg/kg投与において、CDDP水溶液腹腔内投与群はCDDP-MS局注群に比べて増殖が抑制されたが、CDDP力価10mg/kg投与ではCDDP水溶液腹腔内投与群は7日以内に全匹死亡した。CDDP-MS局所投与群では CDDP力価5,10,15,20mgと投与量に比例して腫瘍増殖が抑制された。 (2)副作用の指標として体重の変化ではCDDP水溶液腹腔内投与群ではCDDP力価5mg投与で抗腫瘍効果を認めたが、体重が15%減少した。一方、CDDP-MS局注群ではCDDP力価20mg投与でもコントロール群と同様に体重が増加し副作用はみられなかった。 2.CDDP-MSの転移抑制効果について(家兎を開腹下に胃前壁にVX2腫瘍を移植し胃癌モデルを作成し、腫瘍増殖抑制および転移抑制効果について検討する。) (1)組織内CDDP濃度は、CDDP-MS局注群では胃腫瘍と転移リンパ節でCDDP水溶液局注群、CDDP水溶液静注群に比べて高値で、一方、肝臓、腎臓には有意に低値であった。 (2)各投与群での転移程度は肝臓で0/5,1/5,3/3、リンパ節で0/5,2/5,3/3とCDDP-MS局注群は転移は無く、CDDP水溶液静注群では転移を抑制できなかった。 3.臨床応用として食道癌症例に術前に内視鏡を用いて局所投与し、摘出した原発病変とリンパ節のCDDP濃度より組織移行について検討した。 CDDP-MS局所投与では抗腫瘍効果と転移抑制効果も認められ、臨床応用の可能性が示された。
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