研究概要 |
1,MOC-31抗体による免疫染色を用いた胃癌術中腹腔内遊離細胞の同定:胃癌25例の腹腔内洗浄液検体より得られたPapanicolaou(Pap.)染色による細胞診結果とMOC-31抗体の免染結果は23例(陽住1例,陰性22例)で一致した。一致しなかった2例の見直しおよび他の免染(CEA,BerEP4抗体)結果より,2例中1例は細胞診では癌細胞がみられたが,MOC31にて染色されなかった(誤陰性)。2例中1例はMOC31で癌細胞が染色されたが,細胞診で全く癌細胞がなく,細胞診標本の脱染色後MOC31にて免染施行したがやはり癌細胞はみられなかった。MOC31染色の正診率(96%)は,Pap.染色(96%)および同時に施行したCEAやBerEP4による免染(それぞれ92%,96%)よりも同等あるいは良好であったことより,MOC-31抗体を用いた腹腔内洗浄液の免染は,細胞診の補助診断としての信頼性が高いことが示唆された。 2,CEAmRNA測定による胃癌術中腹腔内遊離癌細胞の同定:胃癌14例において腹腔内洗浄液中のCEAmRNAを測定し,細胞診結果と比較したところ,6例(細胞診陰性の6例でCEAmRNA陽性)で一致しなかった。以上よりCEAmRNA検出は細胞診や免染に比べより鋭敏な遊離癌細胞同定法と示唆されたが,一致しなかった4例において癌深達度がmにもかかわらずCEAmRNAが陽性であったことより,誤陽性の可能性もあることを考慮する必要があると思われた。 3,テロメラーゼ測定による胃癌術中腹腔内遊離癌細胞の同定:胃癌17例において腹腔内洗浄液中のテロメラーゼ活性と細胞診結果と比較したところ9例で一致しなかった。また,テロメラーゼ活性とCEAmRNAとは11例中5例で一致しなかったことより,癌細胞同定に関しては鋭敏な検査法とは言えないと思われた。
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