外科手術後や重症細菌感染症、外傷患者にみられる内科的黄疸の発生原因として、サイトカインとの関係、すなわちSIRSの病態との関連性をみるために、まず、術後や外傷、重症感染症でICU病棟に入院中の患者を対象に、これまで肝障害を持たなかった110症例について検討した。そこで、これらの患者について、血中IL-6やIL10などのサイトカインの測定、ビリルビン値などの肝機能検査および、SIRSの病態診断との関係を調べた。その緒果、検討症例の42.7%がSIRSの状態と診断され、SIRS群では、100.0%に肝機能障害を、97.8%に黄疸の発生をみた。一方、非SIRS群では、86.2%に肝機能障害を28.6%に黄疸が発生し、SIRS群では明らかに黄疸発症例が多かった。IL-6などのサイトカインは、非SIRS群に比してSIRS群で優位に上昇した。また、患者の入院経過中の末梢血中白血球数の上昇と血中ビリルビン値の増加には関連性が推測された。 そこで、SIRS患者群から採取した血清をWistar系雄性ラットモデルの腹腔内に投与して、肝機能障害や黄疸の発生、胆汁分泌機構への障害性を検討しているが、障害性が軽微であり、投与方法、投与量の検討を行っている。さらに、同様のモデルにおいて、胆汁酸やビリルビンなどの有機陰イオン性物質の肝細胞内移送について、とくに微小管が関与している小胞輸送系と、体外からのサイトカイン投与による影響について検討している。また、SIRSの状態では患者の免疫系は低下していると考えられ、細胞性免疫の面からTGF-βなどのサイトカインがhelperT-cellのTh1/Th2サイトカインバランスに与える影響についても、研究を展開させている。
|