研究課題/領域番号 |
11671249
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
水元 一博 九州大学, 医学部, 助手 (90253418)
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研究分担者 |
木下 盛敏 大塚アッセイ研究所, 遺伝子診断センター, センター長
田中 雅夫 九州大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (30163570)
森崎 隆 九州大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (90291517)
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キーワード | 膵癌 / 早期膵癌 / テロメラーゼ |
研究概要 |
我々は、これまでTRAP(telomeric repeat amplification protocol)法を用いて膵癌におけるテロメラーゼ活性の臨床的意義について検討してきた。その結果、膵切除組織では膵癌の80%で活性化されており、一方、膵炎や膵腺腫の組織からは明らかな活性は検出されなかった。さらに、我々は膵癌患者の膵液から高率にテロメラーゼ活性を検出できることを報告している。今回は、膵液を用いた膵癌早期診断法の確立を主たる目的として研究を進めている。現在までに検討し得た24例の膵癌患者のうち20例、83.3%の膵液中に明らかなテロメラーゼ活性を検出した。膵腺腫症例では、23例中1例にのみ陽性であったが、この1例は切除組織で、悪性境界病変と診断されている。一方、慢性膵炎では検討した23例全てが陰性であった。検討した膵癌症例のうち、いわゆる早期癌と思われたのは3例である。このうち1例は膵管上皮内癌であり、1例は癌細胞が膵管から膵実質へ浸潤し、4mmの小さな腫瘍を形成していた。また、1例は膵液中のテロメラーゼ活性のみが陽性を示し、他に癌を示す所見が得られなかったため厳重な経過観察がなされた。その後、最初のテロメラーゼ活性の検出から19ヶ月後に腫瘍が他の画像診断によって検出され切除手術を行うことができた。このように、テロメラーゼは早期膵癌患者の膵液からも検出できることが確認された。今後も更に臨床症例を積み重ねていく予定である。また、我々は乳頭部癌におけるテロメラーゼ活性についても検討を加えた。その結果、乳頭部癌では膵癌同様にテロメラーゼ活性が高値を示した。さらに、乳頭部癌の高危険群である家族性大腸腺腫症の患者では、組織学的に正常と診断された症例でもテロメラーゼ活性が高いことをみいだし乳頭部癌の発癌過程におけるテロメラーゼ活性化の重要性が示唆されている。(論文投稿中)
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