研究課題/領域番号 |
11671249
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
消化器外科学
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
水元 一博 九州大学, 医学部・附属病院, 助手 (90253418)
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研究分担者 |
木下 盛敏 大塚アッセイ研究所, 遺伝子診断センター, センター長
田中 雅夫 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (30163570)
森崎 隆 九州大学, 大学院・医学研究院, 助手 (90291517)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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キーワード | 膵癌 / 早期膵癌 / テロメラーゼ |
研究概要 |
TRAP(Telomeric Repeat amplification Protocol)法を用いて膵癌組織と膵液中のテロメラーゼ活性を測定し、その臨床診断における意義と共に癌治療の標的としてのテロメラーゼの意義についても検討を加えた。 膵癌組織中のテロメラーゼ活性相対値は極めて高く、カットオフ値を相対値1としたときの陽性率は当施設で検索できた26例中25例、96.1%と高率であった。一方、腺腫、慢性膵炎、正常膵組織、正常膵管の相対活性値は全て1以下であり、テロメラーゼ活性化の癌組織における際だった特異性が明らかとなった。ERCP下にバルーンカテーテルを膵管内に挿入し、膵液の分泌をセクレチン負荷で促し、膵液中に遊離してくる膵管上皮細胞を集めてテロメラーゼ活性を測定した。膵液中のテロメラーゼ活性陽性率は膵癌患者の24例中20例83.3%で、膵腺腫では23例中1例4.3%に陽性であった。膵炎症例の膵液は23例全てが陰性であり、テロメラーゼは膵癌の診断に有効である。 乳頭部癌のテロメラーゼ活性を測定すると80%近い陽性率が得られた。また乳頭部癌の危険群と考えられている家族性大腸腺腫症の患者では、病理学的に正常とされた病変や腺腫病変からも50%前後の陽性率が得られた。家族性大腸腺腫症における乳頭部癌の多段階発癌過程においてテロメラーゼの活性化が何らかの役割を担っていると考えられる。 テロメラーゼは、癌診断のみならず治療の標的としても注目される。変異型p53を持つ膵癌細胞株にアデノウイルスを用いて野生型p53遺伝子を導入するとテロメラーゼ活性は明らかに阻害され、その後に典型的なアポトーシスが誘導された。9-hydroxyellipticine(9-HE)は、テロメラーゼ活性を特異的に阻害し、テロメラーゼ活性に基づく膵癌治療の可能性が示された。一方、VP16など幾つかの抗癌剤はテロメラーゼ活性を上昇させる作用がある。VP16によるテロメラーゼ活性上昇率とアポトーシスの誘導率逆相関の関係を示し、テロメラーゼによる抗アポトーシス作用を示していると考えられる。
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