研究概要 |
我々が見いだした胎児型glycogen phosphorylase陽性巣(BGP foci)は、大腸癌における'de novo'型発癌経路の初期変化を示している可能性があり、'de novo'型発癌のおけるメカニズムの解明に重要である。平成11・12年度の科学研究費補助金で研究を行い、以下の結果を得た。1)大腸癌におけるもう一つの主要経路である'adenoma-carcinoma sequence'型発癌経路におけるBGPの発現はadenomaの異型度と強い正の相関があり、強いBGPの発現は高度の異型性を示した。2)BGP fociの分布は'de novo'型大腸癌の局在と密接な関係があった。3)正常大腸粘膜に較べてBGP fociは有意に増殖能の亢進が認められた。4)BGP fociには高頻度のp53 mutationがあった。4)BGP fociのP53 mutationの頻度は41%であり、'de novo'型大腸癌のmutation(47%)とほぼ同等であった。5))K-ras mutationは、'de novo'型大腸癌とBGP fociのいづれにも検出されなかった。2)'de novo'型大腸癌とBGP fociにおけるp53のmutationの部位(exon5,6,7,8)はそれぞれ(58,14,14,14%)と(50,0,25,25%)と類似しており、missense mutationが多かった。 以上の結果から、BGP fociは、'de novo'型大腸癌の前癌病変である可能性が高く、さらなる遺伝子変化の解析によって'de novo'型発癌のおけるメカニズムの解明が期待できることが示唆された。現在、'de novo'型大腸発癌課程においてその変異が重要とされるAPCについてさらに解析を進めている。
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